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1. はじめに

本書は、Amberを東京工業大学学術国際情報センターの TSUBAME3 で利用する方法について説明しています。 また、TSUBAME3 を利用するにあたっては、「TSUBAME利用の手引き」もご覧下さい。 利用環境や注意事項などが詳細に記述されております。
Amberの開発元ではAmberに関するWebページを公開しています。次のアドレスを参照してください。

http://ambermd.org/

また、コンフレックス株式会社のAmberのページは次の通りです。

http://www.conflex.co.jp/prod_amber.html

1.1. 利用できるバージョン

TSUBAME3で利用可能な最新バージョンについてはTSUBAME計算サービスWebサイトの アプリケーション ページをご確認下さい。
研究に支障がない限り、バグ修正の入っている最新版をご利用下さい。

1.2. 概要

Amberは本来タンパク質・核酸の分子動力学計算のために開発されたプログラムですが、最近では糖用のパラメータも開発され、化学・生物系の研究のために益々有用なツールとなってきました。ご自分の研究で利用する場合は、マニュアルや関連する論文等の使用例をよく調べて、Amberが採用しているモデルや理論の限界、応用範囲等を把握しておくことが必要です。現在、Amberはソースコードを無制限にコピーすることはできませんが、東工大内部で利用することは可能なので、これを基にさらに発展した手法を取り込むことも可能です。

Amberの主なプログラムを以下に示します。

1.2.1. モデル作成

LEaP
Amberの入力データの作成を簡便にするためのプログラムで、以下のprep、link、edit、parmの機能を備えています。

PREP
Amberのデータベースには20個のアミノ酸残基および核酸の構成ユニットに対するトポロジーファイルが予め用意されています。 このデータベースにユーザが作成したトポロジーファイルを読み込み、それを解釈し追加することが可能です。

LINK
AmberデータベースやPREPによって用意された残基トポロジーを使用して、分子の一次構造を決定するモジュールです。 たとえ分子がただ1つの残基で構成されている場合でも、このステップを通過する必要があります。

EDIT
EDITには以下に示す3つの機能があります。LINKで作成したトポロジーの残基-残基間の二面角を、PDB(Protein Data Bank)フォーマットに変換します。
LINKで作成されたファイルをCartesian座標などに変換します。 溶質分子の周りに水分子を配置することにより水溶液のシミュレーションの初期データを作成します。

PARM
分子力学パラメータ(平衡結合長、平衡結合角、力の定数、ファン・デル・ワールス力およびクーロン力など)を各自由度および原子対に割り当てるモジュールです。 自分の扱う分子のパラメータがAmberのオリジナルデータベースにない場合は、新規にパラメータを作成して(あるいはどこか別の力場から捜し出して)プログラムに教えてあげる必要があります。

1.2.2. 計算処理

SANDER

エネルギー極小化や分子動力学計算を行うモジュールです。後者では、周期境界条件、拘束動力学(SHAKE法)などが使えるのはもちろんのこと、アンサンブル(NVE, NVT, NPT)の指定も行えます。また、Amber 4.1からは、Ewald法を用いた計算が可能です。(水分子は電気的な永久双極子を持っているため、分子間の静電的相互作用は遠距離まで及びます。基本セルのサイズは、この相互作用をカットオフするにはあまりにも小さいため、何らかの工夫が必要となります。その一つがEwald法です。周期境界条件の下では、系全体を見ると基本セルの電荷分布を単位に、イオン結晶のように電荷が配列しています。Ewald法では、ポテンシャルエネルギーを基本セル内での誤差関数の和とフーリエ級数(逆格子空間での和)の二種類の項で表現し、イオン結晶でのポテンシャルエネルギーの和を効率よく計算しています)。 SANDERではこの他にNMR-NOEデータをリファインする機能がオプションとして用意されています。

PMEMD

sanderの計算速度を大幅に改良したものです。並列化効率も大きく向上しています。 Xeon PhiやGPUがサポートされています。

GIBBS

2つの状態間の自由エネルギー差を計算するモジュールです。自由エネルギー摂動法(Free Energy Perturbation)を初めとする5つのオプションが用意されています。

NMODE

エネルギーの核座標に関する一次、二次微分の計算から遷移状態の探索や基準振動解析を行うモジュールです。

ROAR

機能を拡張した"Penn State"版のsanderです。主な拡張は、システムの一部を量子力学的に定義することができる点です。その他、Nose-Hooverの連鎖MD積分法、Ewald法、multiple-time-scale積分法を導入しています。

その他
データ解析のためのモジュールANAL、CARNAL、RDPARM、NMANAL/LMANAL等があります。Amberの主なモジュールは上記の通りですが、各モジュールを実行するためには様々な計算条件パラメータ(例えばセルの大きさ、クーロン力のカットオフ距離、シミュレーション時間等)や計算ルートを決めるオプションを指定しなければなりません。 これらについてはマニュアルや、Amberに関する研究論文を参照して下さい。

1.3. マニュアル

Amber Manuals (ambermd.org)